ラグビーW杯 南アフリカ戦の後半、PGで狙いを定める五郎丸

南アフリカに勝利し、大喜びの日本フィフティーン

南アフリカ戦に出場した23選手とヘッドコーチ
(1列目左から)
三上、堀江、畠山、トンプソン、大野、リーチ、
(2列目左から)
ブロードハースト、ツイ、田中、小野、松島、立川、
(3列目左から)
サウ、山田、五郎丸、木津、稲垣、山下、
(4列目左から)真壁、マフィ、日和佐、田村、ヘスケス、ジョーンズ・ヘッドコーチ
いずれも9月19日 英・ブライトンで

私が高校2年生の春ことだ。体育の最初の授業で担当教官が「ことしは1年間ラグビーやるから」と言った。冗談だろうと思っていたら、本当に丸々1年間、週2コマの授業はラグビー漬けとなった。男子校で一クラスは45人。まず背の高い順に3列に並ばされ、あっという間に15人ずつの3チームができあがった。背の高い奴はロック、一番背の低い奴はスクラムハーフ、体重がある奴はフォワード、足の速い奴はバックスと、背番号まで決まってしまった。最初はタックルされた際の受け身の練習ばかり。雨の日は教室でビデオを見ながらルールや戦術を学んだ。夏休み前になってようやくボールを持ち、パスやキックの練習が始まった。2学期になるといよいよ実戦形式のゲームが行われるようになり、その頃になると、なぜ背の順に並ばされたのか、ポジションごとの役割みたいなものも分かってきた。3学期には11クラス対抗のラグビー大会も行われた。

それ以来40年近くのラグビーファンである。今でも、年に2、3回だが、たまの休日にわざわざチケットを購入してまで競技場に足を運ぶのはラグビーぐらい。で、今秋のW杯イングランド大会だ。まさかこんな日を迎えるとは夢にも思わなかった。何たって日本は91年大会でジンバブエに勝って以来、24年間勝ったことがなかった。W杯での通算成績は1勝21敗2分。一方の南アフリカは優勝2回、3位が1回、通算成績は25勝4敗で、勝率世界NO.1の大国。

その夜は、しこたま酔っぱらって深夜に帰宅。テレビを付けたら、まさにキックオフの直前。「おお、そうだった。南ア戦だ」。不覚にもすっかり忘れていた。「前半の前半ぐらいで勝負が決まるだろうから、そしたら寝よう」と観戦をはじめた。最初は「なかなかやるじゃん」と思って見ていたが、なかなか引き離されない。後半の途中からは、チンタラやっていた南ア選手もようやく本気モードに。「凄い!歴史に残る大善戦だぁ…」。その後の展開は皆さんご存じの通り。「大善戦」どころかまさかの「大勝利」。酔いも手伝って一人大騒ぎをしていたようで、勝利の瞬間には、家人からは「何時だと思ってるの、うるさくて寝られやしない!」と怒られる始末。なまじっかラグビーのことを知っているつもりの人間にとっては、これは想定をはるかに超える信じられない出来事だった。

スポーツ界にはいろいろな「奇跡的勝利」があるが、私にとっては最上位にランクされるゲーム。しかも生中継で見ることができ、最高に幸せだった。ラグビー好きで本当に良かった。今では名前はおろか、顔も思い出せない高校時代の体育教官に感謝、感謝。

2015年12月