【写真】2014年秋の都心上空。かなりアンダー目に手を加えたテスト写真。12年ぶりの空撮は、いきなりのナイトフライトで大慌ての連続だった。11月16日付で小原前常任幹事の後任となりました。よろしくお願い致します。その2日後の18日、東京写真記者協会事務局長の花井尊さん(満66歳)が急逝されました。その翌週には、次期事務局長の池田さんとの業務引き継ぎが予定されており、私もいろいろ教えていただこうと考えていた矢先の出来事で、目の前が真っ暗になり呆然とするばかりでした。在りし日のお姿を偲び、心からご冥福をお祈りいたします。

さて、前任の小原からの引き継ぎで最初に言われたのは「写協HPに『コラム』欄があって、毎年12月は共同の番だから、まずはそこから…」。とんでもない時期に交代したものです。「もう、締め切りが過ぎておりまして…」と申し訳なさそうな畑中事務局員をこれ以上困らせる訳にもいかず、とにかくチャレンジさせていただきます。

この秋、ちょっとした事情があって、ヘリコプターで空撮する機会があった。最後に乗ったのがデスクになる直前の2002年ごろだから、実に12年ぶりだ。しかも夜間フライトときた。当然、通常の機材では太刀打ちできないので、部員から最新鋭機材を拝借して撮影に臨んだ。普段使用しない機材を自在に扱うのがそう簡単でないことは分かっていたが、ほとんど訓練する間もなく本番を迎えてしまった。

悪い予感はすぐに的中した。日没後の薄暮のなか機体に乗り込んだが、少し旧型の機体だったので、私が座る後部座席には照明がなかった。外はまだうっすらと明るいが、機内はすでに真っ暗でカメラの裏蓋にあるボタン、スイッチ類の位置が分からない。確か、暗所用にファインダー内を照らすライトがあったはずだが、そのスイッチの位置が思い出せない。現役時にはカメラバッグに必ずペンライトを常備していたが、バッグまで借り物ではそれもない。テスト撮影のため、東京タワーを遠巻きに1周した後に現地へ向かうことにしていたが、ドタバタしているうちにとっくに都心上空に着いており、すぐにパイロットさんの「窓開けていいですよ」という声が聞こえた。「そうだ!」とスマホの電源を入れカメラにかざすと、これが結構明るくて、何とかボタン類の位置は分かるようになった。あれこれ悩んでいる暇はない。「エイッ!」とばかりにシャッター優先のオート撮影モードにしてシャッターを切り都心上空を後にした。ところがテスト撮影のモニターを見ると何だか明る過ぎる。完全にオーバー露出のコマも散在するではないか。よくよく調べると、露出補正が「+1」になっている。オート撮影はこれがあるから恐ろしい。現場までさらに30分、真っ暗な中、悪戦苦闘して調整を終え、なんとか本番には間に合い無事に撮影を終えた。今度はきちんと写っている。

しかし苦難の道はまだまだ続く。パソコン本体のスロットで読み込めばいいやと思っていて、高速で読み込むカードリーダーを持参して来なかったのだ。いきなり「(読み込み終了まで)残り時間27分」の表示。これではヘリポートに戻るまでの間、何もできない。普段から「早く、早く! 急げ、急げ!」と号令を出す自分が気恥ずかしくてたまらない。現場の苦労が改めて身に染みる。ああ、万事休す。

パイロットさんによると、この季節にしては、かなり視程は良いらしい。確かに関東平野の半分は見渡せるのではないか。足元から千葉、神奈川方面まで、びっしりと電球の絨毯を敷き詰めたようだ。着陸までやることが無くなってしまったからしょうがない、ここは滅多に見ることができない絶景を楽しむことにした。往きは余裕がなかったが、都心まで戻って気が付いた。「そうだ、国立競技場はどこだ」。新宿御苑から赤坂の東宮御所に続く細長い暗闇の中央部にうっすらと国立競技場が確認できた。新しく生まれ変わり、5年半後、ここで開催される五輪の開閉会式では当然花火も上がるだろう。無理は承知で、是非、この位置から見てみたいなと思った。