今年はオリンピックイヤー。ロンドン五輪が7月27日に開幕する。
去年の9月になでしこジャパンが早々と五輪出場を決め、今年4月には競泳の北島康介が100m平泳ぎに続き、200m平泳ぎでも五輪代表に決まった。今大会のメインどころとなるのは間違いないだろう。

20年前に取材したスペイン・バルセロナ五輪で金メダルの期待がかかったのは、何といっても、柔道。男子の古賀稔彦、吉田秀彦、小川直也らの錚々たるメンバー。女子では “ヤワラちゃん”こと田村亮子(現在は、巨人の谷佳知選手夫人で参議院議員)だった。注目度は抜群。当時16歳の女子高生だったヤワラちゃんは、髪留めリボンがトレードマーク。勝負の時は、ピンク色だったか。初戦が始まるのは日本時間の夜中、朝刊の締め切りぎりぎりの時間だ。コダックが出したデジタルスチルカメラの出番となった。モノクロで、画質も、現在のデジタルカメラと比べたら、雲泥の差。それでも、撮影後すぐに電送できる画期的なカメラだった。

順調な勝ち上がり。決勝の相手は、フランスのセシル・ノワック。効果2つを取られ、2位となった。呆然とするヤワラちゃん。その傍らにはガッツポーズで喜ぶノワック。カメラマン席からはため息がもれた。銀メダルの表彰台でも笑顔は見られない。翌日の1面の写真は、涙をこらえた表彰台ではなく、決勝戦で果敢に攻める写真に決まった。それが上の写真。勝負が決まった瞬間ではなく、私自身も忸怩たる思いの写真だった。

全日本選手権4連覇を達成したばかりの95キロ超級の小川直也は、もっとも金メダルに近い選手だった。目の前で金メダルが見られる。そう確信していた。柔道会場のカメラマン席は、ほとんどが日本の報道陣。一回戦に臨む小川が、待ち構えていた日本人カメラマンの「TATAMI(畳)A」だか「B」だかの前を通り過ぎる。慌てて場所移動する日本人カメラマン。通信社のカメラマンは「何事か!」と驚き、私たちに尋ねる。こちらは得意げに「日本のチャンピオンだ!(気持ち的には金メダルの第一候補だよ。と言ってやりたかったが、なにぶん英語が…)」。彼らも移動せざるを得なくなった。順調に決勝まで勝ち上がった小川の相手は、予想を覆してEUNのハハレイシビリ。開始25秒で技ありを取られ、焦った小川は、強引に相手のふところに入ろうとして、なぎ倒された。合わせ一本の負け。小川は、ハハレイシビリの足元で倒れこんだまま、しばらく立ち上がれなかった。

なぜ、いまさらこんな写真2枚を上げたのか?というと、ロンドン五輪を前にちょっと反省したからだった。またもや金メダルを過剰に期待している自分がいる。W杯で優勝した女子サッカーや、アテネ、北京で100mと200m平泳ぎで連続2冠の北島康介には相当のプレッシャーがかかっていることだろう。他にも、ハンマー投げの室伏広治。女子レスリングの吉田沙保里、伊調馨らに連覇の期待がかかる。彼、彼女らのガッツポーズが見たい。いや、たとえ敗れようと、堂々とした日本人の姿が見たい。五輪を見る楽しみは、選手の一所懸命なプレーだ。

ロンドンで行われる五輪の決勝タイムは、連日未明の時間帯。当時のデジタルカメラと違い、格段に性能アップした最新機種で、その感動のシーンを活写してくれる各社のカメラマンの皆さん。心に焼き付く写真を“期待”しています。(敬称略)