(日刊・森田)

【写真】巨人・小笠原がはじき返したインパクトの瞬間

ありのままを写しとること。またその写しとった像…。


 あらためて「しゃしん」を辞書でひいてみた。すると、このような文言が最初に出てくる。実は現場時代はプロ野球を中心にペンの世界が主戦場。半年前に写真へ移って以来、毎日膨大な数の写真を前に「ありのまま」の重みをかみ締めている。



 私たちが日々接することが多いスポーツも例外ではなく、この原稿を書いている9月のある1週間も、そんな思いで写真に接した。手前みそで恐縮だが、たとえば次のような写真が小紙に載った。

 ◆サッカー日本代表のFW森本がグアテマラ戦で先制のヘディングシュートを決めたシーン。タイミングがドンピシャの写真は森本と相手DF、ボールとともに、森本の頭から汗がほとばしっている様子もとらえていた。

 ◆巨人が中日に敗れ3位に転落した試合で、小笠原が中飛に倒れたシーン。バットが球をはじき返したインパクトの瞬間をとらえた写真は、バットの中央が捕手側にしなっていた。常識ではバットの先端が捕手側にしなるはずだが、球威が勝ったのか? そんな想像をたくましくさせるシャッタースピード5000分の1が見せてくれた世界。

 ◆エンゼルス松井のバットの握りが変わっていることに担当カメラマンが気づいた。構えたときの左手親指のバットへの添え方と、左ひじの角度。小さな変化だったが、並べて掲載すると一目瞭然だった。



 こうして文章にすると、私の筆力が乏しいこともあって何と分かりづらいことか! いや、だからこそ写真が求められるのだ。写真に力があれば、説明はいらない。



 そんな「ありのまま」を写しだすすごさや奥深さをかみ締めながら、写真とカメラマンの世界に引き込まれ続けている。



 もちろん、一瞬を切り取るために必要なのは技術やタイミングだけではない。担当カメラマンによれば、松井のフォームが小さなところで変化していることに気づいたのは、打撃練習を毎日望遠レンズを通して見ていたからだという。こんな話も聞いた。1シーズン、プロ野球を取材していると、投手の癖が分かるという。好、不調が顔や態度に出やすい投手もおり、そんな投手が多いチームもあるとか。



 ニュース写真以外でも、説得力が増す「ありのまま」がある。たとえば、投手がよく口にする「腕を振る」。ある投手が得意のカーブを投じた際、球が手から離れる瞬間を横からとらえると、なんと指先より球が後ろ側に写っていた。



 カメラマンにとっては、このように写真が撮れることは特別なことではないという。肉眼では知りえないシャッタースピードと望遠レンズの世界で、いくつもの「引き出し」を秘めながら、いざというときの1枚を生み出そうと格闘しているのだ。そんな魅力的な世界の仲間に入れてもらって半年。私自身、まだまだ発見をしたいし、力のある写真を読者に一枚でも多く届けたいとの思いを強くしている。