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東日本大震災からまもなく1年が経とうとしています。この間、報道各社は総力を挙げて大勢の記者やカメラマンを現地に派遣し取材を続けてきました。家屋を飲み込んで押しよせてくる津波、壊滅した街、かけがえのない家族を亡くし、途方にくれ肩をおとす人々…。被災した方々には辛く悲しい記憶ですが、私たちが取材・報道した多くの写真や映像は、「記録」として残り、未来に語り継ぐ災害史の貴重な資料となるはずです。

ネットの出現により、ここ数年、新聞各社は従来のスタイルとは異なるウェブサイトでの速報や映像報道に力を入れ始めています。東日本大震災の報道では、紙面で収容しきれなかった写真や動画を大量にアップすることができ、各社とも多角的に未曾有の大災害を伝えることができたと思います。紙数の都合で掲載できなかった写真も、今ではサイト上で幅広く展開できる時代になりました。

産経新聞写真報道局ではマイクロソフト社とともに、写真の持つ力と新しい映像表現に挑戦し、写真好きの人たちと交流の場をつくろう、との思いから2011年1月に『産経フォト』を立ち上げました。サイト運営は、産経新聞やサンケイスポーツのデスクを長く務めた経験豊富なベテランたち。ネットに舞台を移し、紙媒体とは違う視点や感覚で自社取材や通信社の配信する良質な写真を選択し、ニュース、トピックス、フォトエッセイなどのカテゴリーに類別編集し、「魅せる・語る・読む写真」としてユーザーに発信しています。また、フリーの写真家に発表の場を提供し、アマチュアカメラマンのために写真コンテストを企画するなど、写真に特化したユニークなサイトを目ざしてコンテンツの充実に努めています。

サイトの立ち上げから熱心なユーザーの間で評判になっているのが、マウスで自由に視点移動ができてパソコン画面上で360°すべてが見られる球体写真のシリーズ企画「パノラマ写真館」です。産経フォトでは震災報道においても被災地の360°パノラマ写真を積極的にアップし、国内だけでなく世界中からも注目を集めました。これまでに瓦礫に覆われた被災地、避難所、福島第一原発から1キロ地点、被災地の変化をとらえた定点観測など130枚以上を公開してきました。臨場感ある被災地のパノラマ写真は、アメリカやロシア、シンガポール、ドイツ、インドなど各国のMSNサイトが転載し、ドイツのシュピーゲル誌やオーストラリアのヘラルド・サン紙など有力な外国メディアも自社サイトにアップするなど大きな反響を呼びました。

実はこの震災パノラマは、当初現場の取材者には抵抗感がありました。マウスで自由に視点移動し「遊ぶような感覚」で画面を見るパノラマ写真は、「被災現場にはそぐわない。不謹慎なのでは」との声が局内の一部に上がり議論になったからです。しかし、非難どころか「現場に立っている感覚だ」、「現地の被災状況が本当によくわかる」という好意的な多くの声を頂いたのは、通常の紙面取材の合間を縫ってパノラマ撮影を続けたカメラマンたちの大きな励みになりました。静止画の新聞写真だけでは伝えきれない震災パノラマは、ネット時代に生きる写真記者が後世に残す貴重な記録になると信じています。

Webサイト  http://photo.sankei.jp.msn.com/ または『産経フォト』で検索
産経フォトでは「硫黄島の壕の中」や「組閣取材時の首相官邸」、「ジャンボ機のコックピット」、「東京スカイツリー」、「しんかい6500の船内」、「南極」など硬軟取り混ぜたさまざまなジャンルのパノラマ写真を700枚以上公開しています。