新聞各社がウエブサイトでニュース報道を行うようになって20年ほどになります。毎日新聞社がニュースサイトを作ったのもその頃でした。当時ニュースにおいてビジュアルというと写真が主体でした。全国紙が新聞の一面写真をカラー化してそれまでより大きめに扱うようになったのがその数年前の出来事。ところが、最近数年の間にデジタルメディア内の動画の普及スピードは止まるところを知りません。ネットでは、ユーチューブやニコニコ動画だけでなく次々と動画を配信するサービスが誕生しています。

新聞社も数年前からニュースサイトに動画を取り入れるようになってきました。しかし、多くの新聞社には、プロのビデオカメラマンがいるわけではありませんからテレビ局に比べたら、全く素人同様のところからスタートしています。とはいえ、新聞社には新聞社の視点や、取材ネットワークなどテレビ局にない可能性も秘めています。
インターネット上の動画配信サイトの特徴は見る方と動画の作成者が同じレベルでどちら側にもなることができます。ユーチューブなどでは、閲覧者が見たいものを自分で検索したり、あらかじめチャンネル登録したりでき、誰もが閲覧数を知ることもできます。これによって起こることは、今どういうものがよく見られているのかということを、世界中の人がリアルタイムで知ることができるのです。紙の新聞では考えられない双方向の情報の流れがデジタルメディアの中で行われています。もちろん、テキストのニュースでこのようなことは、数年前から指摘されてきましたが、それが今、映像の世界にも浸透してきたと言えると思います。

新聞社において動画の撮影をこれまで写真を撮ってきたカメラマンが担うことも多くなってきました。先に記したように新聞社の動画はまだまだこれからですが、大きな可能性も秘めていますのでこれからどうなっていくのか大いに楽しみにしていただきたいと思います。だからと言ってニュース写真の可能性が狭まっているわけでは決してありません。それと同時にこれまで培ってきた写真の技術を生かしてさらに写真の価値を高めていくことも引き続き重要です。報道機関のデジタルメディアは、動画と写真が互いに補完しながらニュースの受け手に対してよりわかりやすく、世の中の問題や人間や自然の素晴らしさを伝えて行けるようになることを目指さなければならないと思います。

例に漏れず、この4月1日より毎日新聞東京本社写真部は部署名を「写真映像報道センター」と改め動画撮影も行うようになります。この場を借りて東京写真記者協会ホームページ読者の皆様に伝えさせていただくことをお許しください。これまで長く親しんだ「写真部」という名前が変わることに寂しさを感じていますが、新たな組織もよろしくお願い申し上げます。

2015年4月