【写真】〝Jリーグ開幕〟国立競技場で盛大に行われたJリーグの開幕セレモニー

【写真】〝ドーハの悲劇〟ロスタイムで同点にされ、W杯初出場を逃した日本選手ら=齋藤撮影

4年に一度の祭典、サッカーワールドカップ(W杯)ブラジル大会が来月12日、開幕する。現在は本田や香川、長友や岡崎など、多数の日本代表選手が海外のクラブで活躍。W杯出場が当たり前になり、むしろ本大会でどのような成績が残せるか、に注目が集まっている。今から21年前の1993年5月15日、地域密着の理念を掲げ日本のプロサッカー「Jリーグ」が始まった。開幕カードは国立競技場で行われたヴェルディ川崎対横浜マリノス戦。サッカーの取材経験がほとんどなかった私は、新鮮な気持ちで現場に立ったことを記憶している。独特な緊張感の中、ゴール前は特に集中しながら選手にレンズを向けた。

同じ年の10月、サッカー日本代表が今一歩のところでワールドカップ初出場を逃す「ドーハの悲劇」が起きた。この歴史的な瞬間にも「取材」という形で立ち会った。中東のカタールで行われたW杯最終予選。日本以外の出場国はサウジアラビア、イラン、北朝鮮、韓国、イラク。日本の指揮官はハンス・オフト監督だった。

初戦のサウジ戦は0-0で引き分け。第2戦のイランには1-2で敗れた。この時点で日本は最下位に転落し、絶体絶命のピンチに陥った。しかし、第3戦は北朝鮮に3-0の勝利。第4戦で韓国を1-0で下す快進撃で首位に立ちW杯出場に王手をかけたが、残り1試合で北朝鮮以外の5カ国が勝点1差にひしめく大混戦。どの国にも出場のチャンスが残されていた。日本はイラクに勝利すればW杯初出場。引き分けの場合は得失点差で微妙、という状況にあった。

イラクとの最終戦、前半5分にカズのヘディングで先制し、試合を有利に進めた。しかし後半はイラクのペースで、10分に同点ゴールを決められる。しかし、24分にゴンこと中山雅史選手が勝ち越しゴール。この瞬間、「勝てるかもしれない! W杯に行ける」と誰もが思った。私も信じていた。しかし、今に思えばこの1点で浮足立ったような気がする。選手は地に足がついていなかった。「W杯初出場」が頭をよぎり、私自身も試合を追えなくなっていた。ただただ、幕切れを待ち焦がれ、勝利の瞬間、喜びにわく日本代表の姿を狙ってカメラを構えていた。

しかし、ロスタイムにショートコーナーからまさかの失点。2-2の引き分けで試合は終わり、最後の最後でW杯はするりと日本代表の元から去っていった。ホイッスルが鳴った時、グラウンド上には顔を覆い、横たわって動けないカズの姿があった。あっけなかった。今、自分の脳裏に残る記憶はネガに残された瞬間だけ。頭の中が選手同様、真っ白になっていたことは想像に難くない。

あれから21年。あの日の屈辱から這い上がった日本サッカーは、プロ化されて20年の〝成人式〟が過ぎ、「大人の仲間入り」も果たした。代表チームはブラジルでどんなパフォーマンスを披露するのだろうか。できれば「歴史を変える瞬間」を見せて欲しい。