夕刊紙といえば、仕事帰りのサラリーマンが満員電車の中で身を小さくして読んでいるイメージが強い。きわどい見出しで駅の売店に並んでいるアレだ。中身は政治からスポーツ、ギャンブルにゴシップ、三面記事のなんでもござれ。

 

 世のお父さんたちが酒の肴にしたりと“役立つ”?情報が満載。当然、写真も多岐にわたる。政権交代など世間の耳目を引く出来事があると、一面は政治一色。芸能スキャンダル発覚ともなると、連日追っかけまわす。

 

 元グラビアアイドルでストリップデビューしたKさんの場合がそうだった。浅草の劇場の出入り口全てにカメラマンを張り付けるライバル紙もあった。うちは朝からエース一人を投入。「Tスポ、すごい人数来てますよ。応援は(出してくれますか)?」「今はなし。スポーツ(担当デスク)に頼んで昼から出すわ。ま、それまで一人でがんばれよ」非情な命令を出さなければならない。

 

 Kさんは報道陣のあまりの騒ぎように、劇場に入るのを躊躇していたようだ。結局夕方近くに裏口から入ろうとしたKさんは100人近い報道陣に囲まれる始末。もみくちゃになりながらの“撮影会”。うちのエースもどうにか撮れたようだ。芸能ネタは、尽きない。結婚、離婚、不倫。薬物汚染なんて事件にからむこともある。

 

 覚せい剤取締法違反の罪で起訴された女優のSさんが、拘置されていた警視庁東京湾岸署から保釈されるのは夕方の4時過ぎの予定だった。通常の夕刊フジの締切り時間はとうに過ぎている。編集局長の「事件発覚後、初めて公の場に出るSさんの表情を一面に載せたい」との判断で、すでに4人のカメラマンを送り込んでいる湾岸署に写真の電送要員として写真部員を追加した。

 

 頭を下げ、神妙な面持ちのSさんの写真が本社へ送られてきたのは10分後だった。さっそく紙面が刷られ、山手線の主要駅の売店に並んだ。速報が“命”の夕刊紙ならではのドタバタ騒ぎだった。

 

 さて、夕刊紙の速報は芸能、事件ばかりかというと、そうではない。欧米で行われるスポーツイベントは、日本時間の未明から昼ごろが多い。メジャーで活躍するイチローや松井の試合はデーゲーム、ナイターで時間のずれはあるが夕刊時間帯である。今まさに開催されているサッカーW杯南アフリカ大会では、日本代表がデンマークを3対1で破り、決勝トーナメント進出を決めた試合が終わったのは朝方。朝刊各紙は号外を出さざるを得ない時間帯だ。

 

 夕刊フジも号外に負けていられないと、締切り時間を1時間以上早めて出稿。写真はリアルタイムでAP、ロイターの海外通信社や共同通信から続々と配信されてくる。もちろん産経新聞グループからも2人のカメラマンを特派員として送り込んでいる。

 

 本田だ、遠藤だ、岡ちゃんだと写真選定は盛り上がる。結局一面はAPの写真を使ったが、特派員の写真も掲載できた。このページに添付した写真は、左側が当日の夕刊フジの一面。右側は「前垂れ」というもので、駅の売店で新聞の束の前に垂れ下げ、当日の紙面の読みドコロを紹介するためのものだ。

 

 イチ押しがある場合は大きく写真を使って目立たせることもある。興味をひく写真があったら一度ご覧いただきたい。