(11年2月5日 東京都立中央図書館)

 東京・南麻布の東京都立中央図書館で、11年1月7日から2月19日まで、日本新聞協会、日本新聞博物館、東京写真記者協会が協力する企画展「新聞っておもしろい!――新聞の魅力再発見」が開催され、関連して2月5日に「一瞬を切り取る!――報道写真の舞台裏」の講演会が同図書館の多目的ホールで開催されました。一昨年、新聞協会賞、東京写真記者協会賞企画部門賞を獲得した東京新聞「東京Oh!」取材斑の東京新聞・星野浅和次長、笠原和則写真部員、東京写協・花井尊事務局長が講演しました。その抜粋です。
 (定員100人)


 <花井>
 本日は満員の方々に感謝します。まず東京写真記者協会の活動を簡単に説明させていただきます。東京写真記者協会は、首都圏に本社を置く新聞社、通信社、放送(NHK)の各社と一部地方紙が加盟している任意団体です。現在の加盟社は、34社610人です。目的といたしましては、「自由公正な写真取材のため、連絡、調整を行い、写真報道を通じて社会の進歩発展に寄与する」ことです。今では新聞メディアでの写真取材を調整する局面では不可欠の存在になっています。代表撮影、各種取材IDの配布、各取材先とのとり決め(野球、ゴルフ、ボクシング、競馬、ゴルフなど)、報道写真展の開催、同記念写真集の作成などの活動をしています。
 総論として私から15分間ほど話します。まず、報道・新聞写真の役割といたしまして写真は、読者の目を引き付けて、活字には表現できない情報を伝えることが出来ます。新聞写真の持つ記録性や証言能力の重みは、時が経っても変わりません。しかしながら、新聞写真に対する読者の見方は年々厳しくなっています。肖像権、プライバシー、メディアスクラム(集団的過熱取材)に関してのトラブル、インターネットの爆発的普及などで、従来の取材方法を見直す時が来ているかも知れません。しかしモットーとしては、従来から言われていることですが、「より速く」、「正確に」、「分かりやすく」伝えることが肝要だと思います。    
 次に新聞の未来において、その役割に変化はあるのかというと、役割としては変わることはないと思います。やはり記録における「ニュース写真」とニュースの背景を探ったり、問題点を浮かび上がらせたり、都会を切り取り表現するのも含めて問題提起の「フィーチャー写真」の両輪が必要だと思います。どちらも新聞写真、報道写真として存在し続けると信じています。話は飛びますが、現在は一次情報がインターネットを通じていち早く流れます。たとえば世界でインターネットにつながっている人口は20億人といわれていますが、今話題の実名で参加することが前提になっているfacebookに6億人がつながっているというから驚きです。あっという間に情報が共有されます。今やマスメディアとインターネットのキャッチボールで情報が爆発的に広まっていくのです。しかしながら、私としては、既存のマスメディアが限りなくネットに近づいて、これまでの自分たちの存在基盤を切り崩さないようにするべきだと思っています。新聞・報道写真も紙面のみならず、ネットに発信することが多くなってくるかも知れません。
 最後に若干のまとめになりますが、写真記者のあるべき姿といたしましては、新聞が残る限り力強い新聞・報道写真を発信していく気概を持ってほしいと思います。基本はさきほど申し上げましたが、読者、国民に事実を伝達、記録する「ニュース写真」と、写真表現の面白さを含め、ニュースの背景をえぐりだし、これでいいのかと考えさせる「フィーチャー写真」の両輪で迫っていただきたいと思います。

<星野>
 東京新聞で長期連載しました「東京Oh!」という写真企画の担当デスクを務めました。
 新聞社のデスクというと厳しく、ドラマなどでは鬼デスクのような人が登場しますが、実際には部員と編集幹部、整理部など編集者との橋渡し役のようなものです。自分の思い通りにならないことが多いので、ついつい厳しいことを言ったりするだけのことです。しかし、デスクが何を言ったって、現場が頑張らなければ何も生まれない。現場が神様で、デスクはひたすら願うばかりといったところが実情です。

 本日の講演会のテーマは「一瞬を切り取る」「報道写真の舞台裏」となっていますが、一般的に「報道写真」とか、「一瞬を切り取る」言うと事件事故やスポーツなどストレートニュースを思い浮かべるかと思います。しかし、私は新聞に掲載されている、ほぼ全ての写真が報道写真であり、一瞬を切り取った写真だと思っています。実際のところ、そんな格好の良いことを言えないような写真も紙面にはありますが、当然、「東京Oh!」のような写真企画も報道写真だと認識して取り組んでいます。

 ではなぜ、「東京Oh!」のような風景や光景、建物や道路が報道写真なのか。それは、そこに写っていること、あるいは写っていない、見える、見えないといったこと全てが、今の東京を伝えるニュースだからです。そして、カメラマンがこだわる色や線、形、光、影といったものが、そのニュースを構成しているわけです。

 東京新聞では大型の写真を掲載する写真企画を夕刊一面に掲載することが定番になっています。たまたま、企画担当のデスクになり、これまでに12,3本の一面写真企画を手がけてきました。ところが、東京新聞でありながら、今の東京を真正面から取り上げた企画はありませんでした。それは東京のことは、新聞はむろんですが、テレビや雑誌などが取り上げていて、今さら何をテーマに取り組んでいいのか分からない、東京のことはみんなが既に知っていると思うからです。しかし、東京新聞であるならば、やはり足下の東京に目を向けて、そこで何が起きているかを伝えることが責務だと思い、2年に渡って東京に立ち向かうことになったのです。
 「東京Oh!」は3人の撮影スタッフが、全100枚の写真を撮影したのですが、いずれもベテラン揃いで、デスクとしては特段、何かしたような記憶をありません。「東京Oh!」は紙面掲載時、いわゆるキャプションがなく、作品名と17行程度の短い記事だけでした。通常の企画の場合は、読者の目を引くタイトルカット、記事、写真説明、場合によっては地図も掲載します。それは理由があってのことですが、「東京Oh!」は、なるべくシンプルにして、読者の皆さんに1秒でも長く写真を見つめてもらおう、写真が何を伝えようとしているか、この写真に潜んでいるニュースは何かを考えてもらおうと紙面上でも工夫をしたつもりです。それでは数枚の写真をご覧いただきながら、先ほどお話したような、企画写真の中のニュースとは、あるいはニュースのとらえ方など、私たちが伝えたかったことなどをお話ししたいと思います。

この写真の作品名は「水の都」です。

【写真】「水の都」。

葛飾区内を流れる中川の蛇行の様子をヘリコプターから撮影したものですが、ちょうど夕日を浴びて街全体がオレンジ色に染まっています。その様子を、少々オーバーですが、イタリアのベネチアに例えてこの作品名をつけました。「東京にこのような風景があるのか」と話題になった写真ですが、このような写真が撮れる理由は、この川の周囲に高層ビルがないことです。それが下町といえばそれまでですが、この写真から高層ビルの乱立や、あるいはヒートアイランドの問題を考えるきっかけになる。また、首都高速が覆っている日本橋の問題にもつながる。さらに源流域には、あの八ツ場ダムがある。1枚の写真ではありますが、このように多くの問題や課題を見いだすことができるのです。しかし、ただ撮影しただけの写真では、読者の目を引き寄せられない、話題にならないので、このように美しい瞬間を、そしてアングルとしても面白く仕上げる努力をするのです。

 次にカメラマンの着眼点についてお話ししましょう。この写真は、建築中のビルの壁面を1000mm相当の超望遠レンズで撮影したものです。物が落下しないように壁面を覆っているビニールシートですが、風を通したり、明かりを取り込むために、このような状況にすることが、時々あるようです。

【写真】「ワイングラス」。

この様子を切り取った写真ですが、ワイングラスに似ているので、作品名も「ワイングラス」にしました。工事現場とワイングラスという、何ともマッチングしない作品名が、逆に大評判となった写真です。私たちの日常生活にあるもの、日頃何気なく目にしているものでも、切り取り方やレンズワークなどで見たこともないような写真に仕上がるという典型だと思います。このビルは一作年オープンした三菱1号館ビルなのですが、歴史的建造物の保存問題を考えるきっかけになればという思いもありました。

 ただ写しただけでは読者の関心を引けない、注目されない。だから、美しく、あるいは「Oh!」とうなってもらえるような写真を撮ったわけですが、「オリンピック」と題したこの写真がその典型かもしれません。

【写真】「オリンピック」。

この写真は東京オリンピックのために、現在の選手村があった代々木公園と国立競技場を結ぶために通された、いわゆるオリンピック道路です。計画地にあった墓地を移設し、一旦は切り通しになったのですが、檀家の思いをくんで、道路に橋というか、ふたをして、土を入れ、墓を一つ一つ戻したそうです。やはり、お墓ですから、見る人によっては気持ちが悪いかもしれません。それこそ何十年も前からある光景ですから、見せ方を変えなければなりません。そこで車の光跡を生かした美しい写真を撮るためにカメラマンは、近くのビルにカメラを構えます。日没から翌朝まで12時間以上粘ったそうですが、道路と墓地の露出があまりにも違いすぎ、このような表現が可能だったのは、街の明かりが絶妙に混じり合った10分ほどしかなかったそうです。この写真からは都会の墓地事情や道路事情などに思いをはせることができます。しかし、なんと言ってもオリンピックです。東京オリンピックの遺産というか、後遺症みたいな光景は、まだまだあると思いますが、当時は東京都が招致運動をしている最中でしたので、大きな反響がありました。

 時間の関係で3枚しか紹介できませんでしたが、新聞における企画というか、写真企画とは何か。これは、じっくりと時間をかけた上質の報道写真だということです。上質なんて口幅ったいのですが、ストレートニュースでは伝えられない世界でも、写真企画ならお見せできるということだと思います。「東京Oh!」はそのような思いを凝縮して取り組んだ企画です。取材を始める前に集めたネタは約300本。そこから実際に紙面化できたのは5枚程度。残りの95枚は取材を進めながら、足で稼いだネタばかりです。その分、本当に多くの方にお世話になりました。あらためてお礼を申し上げて終わりにしたいと思います。ありがとうございました。

 <笠原>
 撮影者として作品について話したいと思います。
 星野と重複しますが「水の都」について撮影段階の話をします。この写真は、企画が始まる前のネタ探しの段階で都内を空撮した時に、使えそうな一コマとして撮影したのが最初です。こういう地形があることは元々知っていましたので、絵になりそうだということはわかっていました。掲載された写真は夕日が当たっている時間を狙って南西方向から撮影したのですが、実は逆方向の北東側から撮影した蛇行の様子の方が良いと思っていました。そのため、朝日の当たる時間を狙って3回ほどヘリに乗りました。しかし結果的に色が夕日ほど赤みがからず、夕方の写真が採用されました。この写真が掲載された後、いろいろな人に「Oh!」と言ってもらえました。

  この写真は前の水の都とは違って、簡単に撮影できてしまった写真です。私はネタ探しの時には都内をよく歩き回っていたのですが、その際、都立青山公園に行くと、金網に囲まれた米軍施設があることに気づき、また運の良いことに米軍の幹部でしょうか、人員輸送をしてきた米軍ヘリが着陸、飛び去る光景に出会いました。

【写真】「一等地」。

そこでパッと撮影した写真です。この場所は赤坂プレスセンターというのですが、その時は都立青山公園から見えることも知らなかったため、偶然ですが簡単に作品として成立した写真です。

 もう一点、街を歩いて発見した写真を。このいかにも痛そうな針がたくさん付いているのは「鳩プロテクト」という商品だそうで、それが上野駅北にある歩道橋にこれでもかとばかりに取り付けられています。

【写真】「プロテクト」。

「鳩プロテクト」と言うからには鳩をからめて撮影しなければなりません。この鳩を画面に入れるのには苦労しました。一週間ほど通い詰めてやっと撮影できました。

 次にデジタルならではの写真を紹介します。銀座和光の背後に北の空の星が日周運動する様子を写した写真です。これは建物の明るさに合わせてISO100か50、F8で30秒露光を掛けた写真約2000枚を画像処理ソフトで合成したものです。和光は午前0時を過ぎると電気が消されるので、消えてから明け方までの五時間半くらい撮影し続けました。和光の電飾が光っているのは消える前の写真を一枚合成したからです。撮影には合計6時間ほどかかったのですが、帰社してからの画像処理に12時間もかかりました。

【写真】「満天」。

このような合成はフィルム時代は数千枚の写真の位置合わせができず、とうていできなかったものです。デジタルになって初めてできるようになった撮影方法です。実はこの写真を撮影する一年前に、別の企画で同様の方法で撮影をしていたので、経験が生きた作品といえます。

 これも空撮ですが、大井の東海道新幹線車両基地を真上から撮影したものです。私の気持ちとしては先頭を下にした写真がよかったのですが、星野デスクはじめ、編集幹部が上向きのほうが良いということでこの写真になりました。ちなみにこの場所が大井にあり、新幹線が頭をそろえて止まることは知っていました。

【写真】「スタートライン」。

この写真掲載後、どうやって撮ったの? こんなところで撮っていいの? Oh!とびっくりしたよ、など多くの言葉を掛けてもらいました。この写真は私にとってはOh!と思うほどのものではなく、ヘリコプターに乗っていると何となく見ている光景なのですが、前の新幹線の写真を撮影した時に、同乗していた整備士に「あれ撮っといてよ」と言われて撮影したものです。考えてみれば普通の人はこんな光景は見ないわけで、読者をOh!とさせることができました。

【写真】「プラモデル」。

以上私が撮影した中から6点を選んで撮影裏話を紹介しました。

 <星野、笠原、花井の鼎談(ていだん)>

 <花井>
 さて、今回の講演内容が、報道写真の舞台裏となっています。星野さん、笠原さん、舞台裏といってもいろいろあると思いますが、「東京Oh」の舞台裏は聴きましたが、これまで紙面で話題になった写真で、まず撮影段階での舞台裏、紙面掲載する上での舞台裏と分けて考えますと、笠原さん、自分で体験したなかで、撮影段階での思い出の舞台裏はありますか。星野さんには、紙面掲載時に苦労したとか、編集段階で掲載できなかったなどの舞台裏はありますか。

 <笠原>
 ペルー日本大使公邸人質事件取材です。当時は長野五輪一年前でスピードスケート取材のため松本に出張していたのですが、長野・新潟県境で土砂崩れが発生、予定の取材をせずに現場へ移動して1週間取材、その後予定していたアイスホッケー取材に戻りました。ところがその取材を始めた当日に事件発生。部長から連絡があってすぐに長野駅を午前1時半ごろ発車する夜行列車で帰京、機材とパスポートをそろえて昼の飛行機でペルーに飛びました。その後、事件は膠着状態が続いて結局取材を終えたのは3カ月後でした。 この一件が私のカメラマン人生でもっともダイナミックな経験です。
  この事件に限らず、報道カメラマンが事件取材をする時の仕事の大きな部分を占めるのは場所と連絡手段、送稿手段の確保です。当時の現場を写した写真がありますが、これを撮影できるマンションの確保がまず重要な仕事でした。

【写真】「全景写真」。

場所がペルーということもあり、まず、日系人通訳と契約し、携帯電話と業務用無線機をレンタル、大使公邸が見下ろせるマンションの部屋を確保することに相当のお金と労力を使いました。
 そして送稿手段です。事件現場付近は携帯電話の通話を止められていたので、当初は近くのホテルから送稿していたのですが、借りたマンションに臨時電話を引くことにしました。ところが電話の名義人が日本人だと時間がかかることがわかり、雇っていた通訳のペルー人に変わりに名義人になってもらうことでスムーズに設置できました。
  現場で起きていることを撮影する技術はプロカメラマンですから、誰しもあるわけですが、その現場が見えないと撮影できません。その意味では報道カメラマン最大の仕事は場所の確保といえるのではないでしょうか。

【写真】「脚立が並んでいる写真」。

<星野>
 デスクとして…掲載できなかった、あるいは部員が撮った写真をボツにしてしまったことは山のようにあります。それは写真を紙面化するまでに、いくつもの関門があるからです。むろん、現場が一番で、写真そのものの善し悪しもありますが、ここでは社内事情というか編集現場の写真の流れをお話ししたいと思います。
 写真部員が撮影した写真をデスクがセレクトする段階でたくさんの写真がボツになります。まずは部員が現場や社に戻って数枚選んでデスクに見せます。その中からデスクが出稿する1~2枚に絞りますので、この段階でボツが生まれます。時間があれば部員とデスクで議論をしますが、なければデスク判断となります。部員にとっては一押しの写真でも、この段階でボツになる可能性があるのでデスクの責任は重大です。
 次は整理部です。記事や写真を集約して一面、社会面、運動面と振り分ける整理部はその日のニュース量や内容を一番把握している部署。非常に冷静に記事や写真を見ている。
 写真部デスクが一面用と思っていても、掲載する場所がないと判断されることもあります。写真部ではヨコ写真を押しても、レイアウトの都合でタテ写真を要求されることもあります。当然、押し問答があるのですが、整理部の影響力はかなり大きいと思う。
 そして最終的にその日の編集責任者のOKがとれるかどうか。当社の場合は編集局次長が交代で編集責任者となり、写真そのものの質や紙面全体を見て総合的に判断します。写真部デスクがOKを出し、整理部も納得しても、この段階でダメだしがある場合もあります。多くの関門があって、1枚の写真を選んで掲載するまでには本当に苦労します。しかし、このステップがあることで、撮影者の独りよがり、写真部の自己満足ではない写真の掲載につながっています。段階を踏むことでミスがなくなり、読者にとってわかりやすい、信頼のおける写真の掲載が可能になっているわけです。

 <花井>
 「写真は死んでいくのか」というショッキングな見出しがありました。(1/10朝日Globe)よく読むと、今の時代、デジタルカメラ、電子新聞、電子出版、ツイッター、ブログと取り巻く環境の激変に、しかし「写真力」は信じたい、というような内容でした。これまでプリントメディアだった新聞写真が、ウエブに載せたり、別の発信方法を余儀なくされてくると思いますが、星野さんは新聞写真の将来はどうなっていくのか、どうなるべきか、その辺を今の段階で感じていることをお願いします。笠原さんには新聞写真の取材現場での変化、今後の対応などを話してください。

 <星野>
 新聞写真というよりは新聞そのものの、あるいは新聞社ということになるのでしょうか。
 新聞があるなら新聞写真は生き続けるでしょう。しかし、「新聞に掲載している写真」「Webに公開されている写真」「あるいはその他の電子メディアに載っている写真」が同じ場合がある。あるいは単にコマ違いなら、それは新聞写真とは言えないのではないでしょうか。新聞社の写真部の仕事が多様化している象徴で、少し前は「Webにも載る写真」だったのが、今では「新聞にも載る写真」と「Webしか載らない写真」を撮っているのが実情です。しかし、新聞写真はあくまで報道写真であって、さらに見出しや記事とともに紙面に存在していることを忘れてはいけません。1枚の写真が持つ力は当然大きいと思いますが、新聞写真は多くの編集人が関わって初めて世に出る写真であり、新聞に掲載された写真と1枚のプリントあるいはネットに単独で流れる写真では、その価値、意味合い、そしてなりよりも信頼性が圧倒的に違うと思います。

 <笠原>
  取材現場では、ムービーを撮影するカメラマンや記者が増えました。記者会見場の記者席の小型テーブル上に小型のムービーカメラを置いて写真撮影の傍ら会見のようすを動画撮影したり、一眼レフカメラをかまえているのに撮影しているのは動画、と言うカメラマンも見かけます。デジタル一眼レフカメラに動画機能が付いているからできることです。  インターネット用ですが、紙媒体用の写真以外に電子メディア用の動画も求められているようです。

 <花井>
 昨年11月、国会で当時の官房長官から、衆院予算委員会審議中に「望遠レンズで盗撮されたようです」の発言があり、在京8社写真部長会で、発言修正を求め、議事録を修正して陳謝させたことがありました。写真は権力側と対峙することが、時としてあります。これまでは黙殺していたこともはっきりものを言うようになりました。この一件以来、首相官邸とか国会内で写真取材がやりにくくなった、または、やりやすくなったことはありますか。

 <笠原>
 最近国会取材をしていないのでわかりません。しかし、あのような発言をする政治家は今までいなかったのでちょっとびっくりしました。かつてキッシンジャー米国務長官が国連の場で、手元の資料を望遠レンズで撮影されたことがありましたが、それを盗撮呼ばわりしたなど聞いたことがありません。

 <星野>
 この一件があった直後に当社の国会担当カメラマンから報告を受けたが、ちょっとあきれた。国会の議場、予算委員会の部屋の構造は何十年も変わっていないし、過去にもあのような写真は山ほど撮ってきた。あの場所が国民が注視している公の場所だということを忘れているのではないか。前官房長官の個人的な資質の問題ならいいのだが、民主党政権になって代表取材が増えたと感じるし、民主党本部内の取材のしにくさを口にする部員も多い。マスコミに対して何か独特の意識があるのではないかと思ってしまう。在京8社写真部長会の素早い対応は評価できる。黙っていてはいけないと思う。

 <花井>
 いろいろ議論してきましたが、将来、新聞写真も考えられない変貌を見せるかも知れません。星野さん、「べき論」になるかも知れませんが、こうあるべきだ、と考えることがありましたら、お願いします。笠原さんにも同じ質問です。

 <星野>
 新聞写真の将来につながるが、メディアの多様化が進む中で、写真部というセクションの有り様も変わっていくと思う。しかし、大事なことは、私たちは報道写真を撮るということです。それを強く意識して、撮る理由や伝える、つまり新聞に掲載する理由が何であるかによって、報道写真かそうでないかが決定づけられる思います。面白い写真を撮ったので、みんなに見せようと、単にネット流すのは報道写真ではない。報道の目的は私たちの生活の向上や幸せにつながること、あるいはそのための問題提起が肝要です。撮影時あるいは公開するときにこの目的があるかどうか…ここが分かれ目だと思います。

 <笠原>
 今まで通り、紙媒体用に撮影した写真は質が高く、インターネット時代にも十分通用する写真です。インターネットを使えば新聞には載せられなかった多様な写真を読者に提供できるようになります。これをチャンスにして、報道カメラマンの撮影した迫力ある写真をより多くの人に見てもらい、心を動かしてもらえればと思います。

 <花井>
 私としては、やはり新聞・報道写真は信頼性を失えば、ただのごみくずになってしまうと思います。それを前提に、国民に知らせる、記録するという点と、問題提起の視点が大きなメッセージ性を持つと思います。それが写真ジャーナリズムの原点じゃないでしょうか。このことは、これまで識者や数々のジャーナリストが発言してきたことですが、これにつきると思います。もちろんスポーツ、娯楽の写真も大切です。基本的には人間の喜怒哀楽を伝えていくことが大切だと思います。人の営みをたたずむ都会とか、人のありよう関心とか、新聞・報道写真は、何らかのかたちで人間にからみつく写真であって欲しいと願っています。

◎「一瞬を切り取る!-報道写真の舞台裏-」アンケート結果抜粋
<主なコメント>
 ☆一瞬を切り取るため、問題意識を持ちつつシャッターを切る等、興味深い内容でした。
 ☆「一瞬」の素晴らしさ、苦労の舞台裏について、わかり易く説明されたのでとても興味深く聞きいってしまいました。3人とも説得力のある人柄が感じられ、とても好感が持てました。
 ☆「一枚の一瞬時間の写真」心を動かし感動をよび人生を変えるような物であると思いました。「東京Oh!」写真展大変素晴らしく、一瞬を切りとるそのもので良かったです。
 ☆映像が効果的であった。奥の深い話を聞きました。
 ☆報道写真の裏側が良くわかりました。新聞をこれから見る(読む)楽しみが増えました。
 ☆写真をとる行為が今の時代を見る、考えるというのと同じだということを感じました。
 ☆新聞写真の重要性が良く語られ今後の在り方が伝わったと思います。
 ☆努力、ご苦労が伝わってきました。担当者で話し合っている様子又写真を写している様子が目に浮かんできました。
 ☆構成と講師が良い。
 ☆写真を取っている時の気持をもっと沢山話してほしかった。質問コーナーはわかりやすくて良かったでした。
 ☆もっとこれからの新聞ビジョンを聞かせてほしかった。

以上