横綱昇進の伝達を受け、口上を述べる稀勢の里
=1月25日、東京・内幸町の帝国ホテル
東京中日スポーツ・神代雅夫撮影「日本生まれの横綱は19年ぶり。そういった重圧というものはありますか」
横綱伝達式での代表質問で、稀勢の里が一瞬固まった瞬間だった。その質問に一呼吸置いた。そして「慎重」に言葉を選んだ。
「先場所の九州場所、(今回の)初場所から気持ちの部分でも落ち着いて相撲がとれた。これからも平常心で落ち着いた相撲を目指したい・・・」と。

この記者会見をテレビで見たとき「質問と答えが合っていない」と思った。心の内はよく分かる。先輩の横綱力士が押し並べて外国人力士だ。質問に正確に答えることを避けた。この稀勢の里の謙虚さが、ある意味「日本人」だと思った。遠慮であり配慮だと。

「日本人として自分がなんとかしなければ、という思いもあったのでは」
代表質問がたたみかける。
「そういう気持ちもあったけれど・・・。1日一番をしっかりやるようにしたい」。稀勢の里の目元は、下を向いたままだった。

「口上」について問われ、ようやく上を向いた。人間性が見えた瞬間だった。現場のカメラマンが、このあたりの心の動きを感じたかは分からない。翌日の紙面は「ファクト(事実)」は伝えているけれど、「マインド(心の内)」は表現されていなかったように思う。新聞は常に事実としての結果が求められる。しかしその背景にあるもの。「なぜ」と問うことも必要だ。

日々、写真部デスクとして仕事をこなしている。受けデスクとして大量のサムネイル画像を見る。しかし「フィールド(現場)の空気感」は推し量れない。唯一の頼りはこれまでの経験だったり、今回のようなテレビのライブ中継だったりする。

だがもっと大切なもの。なんだろう。わたしは「理解力」と「想像力」だと思う。それが「直感」として瞬時に把握できれば・・・。だが難しい。「現場のカメラマンもデスクも、求められる資質は同じなのかもしれない」と自分に問いかけた。かつて現場に出ていたころの自分を振り返るかのように。

2017年2月