被爆者の森重昭さんと抱き合うオバマ米大統領(5月27日、広島市中区の平和記念公園)

オバマ米大統領が小中学生に手渡した折り鶴(5月27日、広島市中区)

オバマ米大統領が広島を訪れた5月27日午後。歴史に残る1枚を撮ろうと、報道各社のカメラマンはそれぞれのポジションで来たるべき時を待った。

舞台となった平和記念公園は厳しい規制が敷かれ、一般の人たちは立ち入り禁止。カメラマンの人数もかなり制限された。重要なポイント3カ所はプール取材=代表撮影となり、いわゆる各社取材になったエリアは1カ所だけ。それも1社2名に限定され、撮影位置を決めるための抽選が行われた。わが社のOカメラマンはくじ運悪く順位は最下位。だが実際に撮影の瞬間を迎えてみないと、そのポジションがほんとうに良くないかどうかは分からない。献花を終えたオバマ氏が被爆者の代表に歩み寄り言葉を交わす場面では、7段脚立の上で600㍉の超望遠レンズを構え、冒頭の写真をものにすることができた。

一方、献花ポイントの取材からあぶれたAカメラマンは周辺取材にまわった。カメラマンの数が少ない日経の場合、かけ持ち取材は当たり前。被団協記者会見の取材を終え、次はオバマ氏がサインした芳名録の撮影に向かったが、資料館に着いたときには撮影順は最後の方になってしまっていた。撮影が終わってカメラマンも残り少なくなり情報収集のために残っていると、急きょオバマ氏が小学生に手渡した折り鶴を撮影できることになった。残り物に福、とはこのことか。すぐに写真を本社に送信、朝刊紙面用に準備するとともに電子版の公式ツイッターにも投稿。リツイートが3000を超える大きな反響があった。

事前に情報を集め可能なら下見を重ね、どんな取材でもできるかぎりの準備をして写真記者は現場に臨む。今回の広島のような現場にそれぞれの社を代表して取材するのならなおさらだ。実際にうまく撮影できるかどうかはまた別の話でもあるが、ベストの準備をつくしていればこそ、運も味方してくれるというものだろう。それが大きなスクープ写真につながれば言うことなし。そこまではなかなか、うまくはいかないが…。

2016年6月