ロンドン五輪の陸上競技男子100mを取材するカメラマン=2012年8月5日、五輪スタジアム

組閣の記念撮影を待つ写真記者ら=2010年6月10日、首相官邸

昭和基地に近い南極大陸周辺をヘリコプターから取材する筆者。機内は凍てつく寒さ。写真記者は現場がすべてだ=2011年2月6日

うだるような暑さが続く8月、昨年より4か月遅れて就職試験が解禁になり、マスコミを志望する学生らの就職活動も佳境に入った。新聞社や通信社の写真記者を目指して、文字通り汗を流している人もいることだろう。活字媒体の長期低迷が取り沙汰される中、あえて挑戦する人がいるのはうれしい限り。お節介と知りつつ、将来の同僚にひと言―。

あなたは、写真記者という職業にどんなイメージを持っているだろうか? 好意的な見方では、色々な現場に行ける▽さまざまな人に会える▽派手な感じ▽面白そう―などがあるだろう。そんな側面があるのは確かだ。が、取材の多くは政治、社会、経済、外信、運動、文化など各出稿部からきた撮影依頼をこなすこと。基本的には「受け身」の仕事が多い地味な仕事である。だが、開き直って考えると楽でもある。仕事は山ほどあり漫然と写真を撮るだけで日々は過ぎていくからだ。

しかし、それは表面的な部分でしかない。今は携帯電話に高画質のカメラが内蔵され、誰もがカメラマンという時代。自然災害、事件事故などの現場をいち早く記録するのは、ほとんどの場合マスコミ関係者ではなく、そこに居合わせた人になっている。

それだけに写真記者には、ただ現場を写す技術だけでなく「ニュースを見る目」や「世の中を読む目」が求められている。デスクに指示されたから写真を撮るのではなく、その被写体にどんな意味があり、どんな視点でシャッターを切るべきなのか。たまたま現場にいただけの人には伝えられない部分を「自分の目で的確に切り取る」のだ。

「ニュースの根幹を見極めないと事の本質は写せない」。これを肝に銘じてほしい。
その上で、「自分の視点で企画取材ができないか」を常に意識しながら、あらゆる事象と向き合ってみる。身の回りで起こったこと、耳に入ったニュースなどに「本当?」「それでいいの?」など、素朴な疑問を持つことが、はじめの一歩。ただ、新たな視点でニュースを取材し紙面化するのは容易ではない。ベテランの先輩は物分かりがいいような事を言いながら、頭が固いケースが少なくない。キャップやデスクを説得するだけでも大変だろう。

しかし、多くのハードルをクリアして結果を出せば一気に世界が広がる。誰も知らない隠れた事実や問題点を写真で読者に伝えることこそが、写真記者の究極の仕事だと信じたい。近年の新聞紙面を見ても、写真記者主導の企画は確実に増えている。

写真記者が技術だけで評価された時代は遠い昔に終わった。逆にいうと、写真を専門に学んでいない人も心配無用だ。写真記者に対する真摯な気持ちさえあれば不利なことは何もない。念願かなった皆さんと、どこかで会える日を楽しみにしている。

2015年8月