2020年夏季五輪・パラリンピックの開催都市が東京に決定して、2年半近くが経とうとしている。あの歓喜の瞬間は、もうずいぶん前のことのように感じるが、その間には新国立競技場の建設費やエンブレム選考の問題など競技以外のことが注目を集めてきた。しかしリオ五輪の開催を半年後に控え、ようやく選手や競技に関する話題が紙面やテレビをにぎわすようになってきたと感じる。不透明な問題は早く解決して、アスリートの活躍を応援できる環境を整えてあげたい。

私にとってのオリンピックの記憶は72年の札幌冬季五輪に始まる。64年の東京五輪は幼すぎて、残念ながら記憶にない。札幌五輪当時、小学生だった私は、トワ・エ・モワが歌う大会テーマ曲「虹と雪のバラード」を口ずさみ、日の丸飛行隊と呼ばれたジャンプ陣の金銀銅独占を喜んだ。フィギュアスケートの妖精ジャネット・リンの笑顔には、子どもながらにときめいた。スポーツと言えば野球ぐらいしか知らない子どもが、ノルディックスキーやボブスレーなどの未知の競技に驚き、食い入るようにテレビ観戦したことを覚えている。

その後、縁があってこの世界に入り、プロ野球を中心にスポーツ取材にあたったが、運良く五輪取材にも行かせてもらった。観客の興奮が入り交じる開会式の熱気や、アスリートが見せた歓喜の表情や悔し涙は、自分にとっても忘れられない貴重な財産となった。世界最高レベルの競技が繰り広げられる五輪の舞台は、カメラマンにとっても大舞台。五輪取材が決まったカメラマンは、数年前から五輪種目の取材を重ね、ベストのアングルやシャッタータイミング、そして選手や競技の細かいルールなどについて学ぶのである。経験を積んで撮影技術を磨くことも重要だが、選手の名前や顔、そして経歴や選手が持つ特別なストーリーを知ることによって取材する楽しみが増す。こうして自分も選手のファンになり競技が好きになることで、より良い写真が撮れるようになる。残念ながら現役を離れて久しい私は、もう五輪取材に行くことはあり得ないが、写真を編集する立場としても選手や競技を知ることはとても重要だ。そして近年は五輪競技に新しい種目が次々と追加されているのでなおさらだ。

そんな中で最近私が注目しているのは、リオ五輪から正式種目に追加される女子7人制ラグビーで、出場を決めたサクラセブンズ(愛称)だ。恥ずかしながら私は女子ラグビーを見たことがなかった。しかし男子ラグビーの活躍によってか五輪最終予選のテレビ放送があり、すっかりファンになった。7人制ならではの素早い展開とスピード。そして男勝りの激しいプレーを見せたかと思うと、ノーサイド後にはさわやかな笑顔が待っていた。翌日の紙面では、世界一の猛練習で知られたラグビー男子のエディー・ジャパンより、自分たちの方が走り込んでいると自負する記事が目についた。何とも頼もしいではないか。彼女たちも脚光を浴びるまでは長い苦難の道を歩んでいる。アジアの頂点に立ち、そして世界の頂点を目指す彼女たちの夢が、花開く日を期待してやまないのである。そして、さらに東京五輪では、野球・ソフトボールの復活のほかに4つの新しい競技が採用される予定だという。楽しみが増えた分、しっかりと予習をしておきたいと思う。

2016年2月