《昆 愛海ちゃん》

6月のコラム

東日本大震災で亡くなられた方が1万5千人を超えた(5月14日現在、警察庁調べ)。行方不明者も9千人を上回る。避難されている被災者は11万5千人以上だ。観測史上最大マグニチュード9.0の大地震は人々を恐怖へ落とし入れ、大津波はすべてを奪い去っていった。この震災被害を言い表す適切な言葉を私は思いつかない。

読売新聞が3月31日付け朝刊1面で伝えた昆愛海(こん まなみ)ちゃん(5)。「ままへ。いきてるといいね。おげんきですか」覚えたばかりの平仮名で行方不明の母親あての手紙を書き、その上に頬をのせて眠っている写真は読者の大きな反響を呼んだ。震災で両親や家族を亡くした子どもたちを正面から取り上げた写真だった。写真部には援助の申し出はもちろんのこと、養女に迎えたいという電話も寄せられた。

愛海ちゃんのこの写真を見るたびに胸を突き上げるむなしさややるせなさ。同じ思いであっただろう読者に「愛海ちゃんの今」を伝えなければと5月に入って写真グラフを掲載した。ノートには、母親への手紙の続きが書かれていた。「おりがみとあやとりと ほんよんでくれてありがと」。やさしかった父親には「ぱぱへ。あわびとか うにとか たことか こんぶとか いろんなのおとてね」と一生懸命につづっていた。

ほほ笑む母親の写真を手に「ママ、かわいいね」とささやく愛海ちゃん。家事を手伝いながら両親と妹の帰りをまつ愛海ちゃん。その小さな背中にどんな言葉をかけたらいいのだろうか。