女優の川島なお美さんが9月24日、54歳で亡くなった。その月の7日、ご主人と仲良くイベントに出席した際に、黒いドレスからのぞく二の腕のあまりの細さに関係者はもちろん、取材した我々も心配していた。ただ、ご本人は翌日からスタートする舞台への意欲を笑顔で語っていただけに、わずか17日後の訃報を信じられない思いで聞いた。

編集局に情報が伝わったのは午後10時すぎ。すぐに1面の切り替え作業が始まった。整理部からリクエストされたのは、7日のイベント時の写真だった。しかし、写真部の担当デスクはこう主張した。女優としての生き方を貫いたのだから、美しく華やかな姿で彼女を送ってあげたい-。議論の末、最後はこの考えが認められた。9月25日付最終版1面のメーンになったのが、ここに紹介する写真。2007年11月、大好きだった赤ワインのグラスを手にほほえむカットだった。

考え方、選択肢はいろいろあっただろう。でも、僕はあの日のような新聞づくりを大事にしていきたいと思う。自分たちの思い、願い、狙い、意図といったものは、紙面を通じて必ずや読者に届くはずと信じるからだ。川島さんを思いやり、優しさを込めて写真を選択したデスクの気持ちを理解してくれた人がたくさんいたはずだと信じたい。それがネットでは表現できない、紙ならでは温かさだと思う。

僕自身もうれしかった。大学進学で田舎から上京した直後、安アパートで楽しみに聴いていたのが川島さんのDJ番組だった。女子大生アイドルの先駆けのキュートな笑顔に「頑張って青学に行けばよかった」と本気で後悔したことを思い出す。同世代の、あこがれていた女性を優しく、温かく見送ってくれたことが、本当にうれしかった。

2015年11月