新聞記者になって30年近く、20年弱は取材記者、その後の10年ほどはデスクなどを務めました。ペンの記者として写真記者とはタッグを組んで、いくつかの仕事をしてきました。ここに掲げた写真は、その中でも強く印象に残る1枚です。

もう今から15年も前、当時の日曜版のフロントページに大きく掲載されました。撮影したのは同僚の清水隆君(現在は大阪写真センター)です。

 この写真とともに掲載した私の文章はざっと次のような内容でした。

ケニアの首都ナイロビ郊外の路上に、へその緒がついたままの赤ちゃんが捨てられていた。その子は拾われ、孤児院に運ばれた。まったく泣かないので調べるとエイズに感染していた。「すぐに死んでしまうだろう」とみんなが思ったとき、その孤児院の一人の女性看護師がこの子を抱きしめ続けた。数ヶ月して泣き声、そして笑い声が聞こえだした。懸命に生きようとしている。この看護師は、難しい子どもをこうして何人も救ってきた。その力の源泉はどこにあるのか。

写真は看護師と、この赤ちゃんが見つめ合う姿をとらえています。「一番大切なことは何か」という私の質問に、彼女は「アイ・コンタクト」と答えました。清水君は、その言葉が形になる瞬間を逃さなかったのです。文句なく、すばらしい写真です。

記事にはさまざまな反響がありました。NHKの「中学生日記」という番組でドラマの題材となり、教師がこの写真を使って授業をしているシーンを記憶しています。

思えば、このときは別の取材も含め、清水君とは1ヶ月以上一緒に旅をしました。出かける前、旅の最中、私がどんな取材をしてどんな記事を目指しているのか話し、語り合いました。以心伝心とまでは言いませんが、ペンで表現しようとしていることとカメラの呼吸がぴったり合うと、とても気持ちがいいものです。

昨年秋、東京写真センターの一員になり、この欄を担当するにあたって、そんなことを思い起こしました。

2009年4月