©2019 TOKYO PRESS PHOTOGRAPHERS ASSOCIATION
東京写真記者協会賞-2023年グランプリ
「戦地に彩りを」ウクライナ侵略1年 
産経新聞社 川口 良介 
停電で真っ暗な部屋で、スマートフォンの光に色鮮やかな絵の具が浮かび上がった。日常を奪われ、モノクロの世界を生きるウクライナの人々。表現者たちは平和を願う作品を街中に残し、アートは子どもたちの心のよりどころとなる。日常に彩りを取り戻すため、絵筆を手にした市民の反抗が続く
美術教室に通うビクトリア・クラッシェークさん(11)。停電の中、スマホの光で絵を描くことにも慣れた。「私にとって大切な時間。全然苦じゃないよ」。真剣な表情で筆を執った(ウクライナ・キーウ 2月8日)
放置されたロシアの戦車には芸術家によって、平和の象徴であるハトが青と黄色のウクライナ国旗色で描かれていた(ウクライナ・キーウ近郊 2月10日)
ロシア軍による市民の虐殺が起きたブチャの建物には、反戦を訴える子どもの絵が壁に残されている(ウクライナ・ブチャ 2月10日)
倒壊した建物の壁に描かれた絵はバンクシー作とされる。投げられている人物が、プーチン大統領に似ていると話題になった(ウクライナ・ボロディアンカ 2月10日)
破壊され、積み上げられた車両。弾痕が残る車体には、未来への希望を込めたヒマワリが描かれていた(ウクライナ・イルピン 2月10日)
一般ニュース部門賞(国内)
河野太郎 わが道をゆく
毎日新聞社 宮武 祐希 
第2次岸田再改造内閣が発足し記念撮影後、各閣僚がエスカレーターを使う中、階段を使い引き揚げる河野太郎デジタル相(首相官邸)
一般ニュース部門賞(海外)
禁輸、自国水産物にも悪影響
読売新聞東京本社 大原 一郎 
東京電力福島第1原子力発電所の処理水放出で中国は日本の水産物を輸入停止にした。しかし水産物全体のイメージが悪化。北京の海鮮市場は客足が途絶え、従業員らは暇そうにしていた(中国・北京)
企画部門賞(国内)
ずっと孤独で路上に立ち……
朝日新聞社 藤原 伸雄 
新宿・歌舞伎町(東京都)で、売春目的で客待ちをしたとして売春防止法(売防法)違反で検挙された人数が9月までに、例年を大幅に上回る80人になった。こうしたなか、売春から抜け出せるように個々の女性の事情に応じて支援する活動が続いている
歌舞伎町の大久保公園周辺に立つ右麗さん(東京都新宿区 3月29日)
歌舞伎町の大久保公園周辺に立つ右麗さん。自傷行為の痕がひじまであった(東京都新宿区 3月3日)
歌舞伎町で夜回り活動をするNPO法人「レスキュー・ハブ」の坂本新さん(左)(東京都新宿区 3月31日)
右麗さんがつづった思い。「誰かに愛されてみたい」「しあわせになりたい」など、その時の気持ちを書くようにしている(東京都新宿区 3月29日)
企画部門賞(海外)
世界を襲う惨禍
読売新聞東京本社 関口 寛人 永井 秀典 
2023年も世界各地で災害の惨禍が人々を襲った。トルコ、モロッコでの大地震、米ハワイでの山火事...。甚大な被害とその中で生きる被災者の姿を伝えた
トルコとシリアで発生した地震では死者が5万人を超えた。犠牲者を埋葬する墓地で親族の死を嘆き悲しむ少女(トルコ・アドゥヤマン 3月1日)
トルコ南部で発生した地震でつぶれるようにして崩れた建物(トルコ・ヌルダウ 2月9日)
モロッコ中部でマグニチュード6.8の地震が発生し、30万人超が被災した。倒壊した建物の近くでけがの手当てを受ける住民(モロッコ・アミズミズ 9月12日)
米ハワイ州マウイ島で山火事が発生。島西部にあるラハイナでは2700棟以上の建物が全半壊した(米国・ハワイ州 8月20日)
山火事により大勢の人が犠牲となったマウイ島で知人と抱き合って涙を流す女性(米国・ハワイ州 8月19日)
スポーツ部門賞(国内)
たっちゃんだ 〝べー〟
日刊スポーツ新聞社 菅 敏 
WBC1次ラウンド初戦、中国戦。チームを救うスライディングキャッチを見せたラーズ・テイラー・タツジ・ヌートバー。舌を出しながらのド迫力プレーに、ファンは一気に「たっちゃん」のとりことなる(東京ドーム)
スポーツ部門賞(海外)
メッシのW杯
毎日新聞社 宮武 祐希 
サッカーW杯カタール大会でアルゼンチンが36年ぶりの優勝。集大成で臨んだ主将・メッシはトロフィーを高々と掲げた(カタール・ドーハ近郊)
文化芸能部門賞
見ざる・言わざる・聞かざる
東京新聞 戸田 泰雅 
故ジャニー喜多川氏による性加害問題を受け、厳しい表情で記者会見に臨む(右から)藤島ジュリー景子さん、東山紀之さん、井ノ原快彦さん(東京都千代田区)
〈奨励賞〉一般ニュース部門(国内)
前人未到の八冠
日本経済新聞社 澤井 慎也 目良 友樹 
将棋王座戦第4局の最終盤、自身の落手に気が付き頭をかきむしる永瀬拓矢王座(右)。藤井聡太七冠は永瀬王座を破り、史上初となる八冠を達成した(京都市東山区)
〈奨励賞〉一般ニュース部門(海外)
続く戦時下 戦死した兵士たちの遺影に触れ涙 ウクライナ侵攻から1年
朝日新聞社 竹花 徹朗 
キーウ市内の学校で校長を務めるオレナ・イルシェナさん。卒業生2人が東部激戦地のバフムートで亡くなり、兵士の遺影が飾られる壁を訪れ、写真に触れながら献花していた。ウクライナがロシア軍の侵攻を受けて、24日で1年。家族や家を失い、先の見えない不安を抱えながらも人々は助け合い、戦時下の「日常」を続けている(ウクライナ・キーウ)
〈奨励賞〉企画部門(国内) 
戻ってきた日常
読売新聞東京本社 西 孝高 武藤 要 片岡 航希 須藤 菜々子 木田 諒一朗 
新型コロナウイルスの感染症法上の分類が5類に引き下げられた。街には戻ってきた日常を楽しむ人や外国人観光客とそれを支える人たちの笑顔があふれていた。そうした2023年の日本の姿を活写した
分類引き下げの前日、飛沫防止シートを撤去する百貨店の従業員(東京都中央区・松屋銀座 5月7日)
コロナ禍の影響で4年ぶりの開催となった神田祭の神事「神幸祭」。神輿の担ぎ手たちは笑顔でかけ声をかけていた(東京・日本橋 5月13日)
神奈川県逗子市の逗子海水浴場で海開きが行われた。今年はマスク着用が求められず子どもたちは歓声をあげていた(神奈川県逗子市 6月30日)
東京都墨田区のとんかつ店で行われる「相撲ショー」。コロナ禍を過ぎ、訪れた外国人観光客からは「日本の伝統の国技と食文化を学べる」と好評だ(東京都墨田区 8月16日)
日本を訪れる外国人観光客の利便性向上を狙い、西武鉄道が設置した同時通訳機能がついた透明なディスプレー(東京都新宿区 7月5日)
〈奨励賞〉企画部門(海外)
恵みと脅威の水辺で生きる 河岸浸食相次ぐバングラデシュ
朝日新聞社 西岡 臣 
バングラデシュ南西部にある世界遺産のマングローブ林「シュンドルボン」。そのすぐそばで、河岸浸食によって住まいを追われる人々がいる
木や竹で出来た橋を渡る人。河岸は大きく削られていた(バングラデシュ・クルナ県 9月9日)
政府が整備した堤防の外側にある自宅前に立つレヘナ・ベゴムさん。50万タカ(日本円で約68万円)あれば堤防の内側に引っ越せるが、漁などで稼ぐ1日700タカ(約950円)の収入ではそれも難しい。「父の時代から貧乏で、堤防の内側に土地を買えませんでした。その日、食べるだけで精いっぱいです」。まだ幼い娘と息子を抱っこしながら、眉をひそめた(バングラデシュ・クルナ県 9月10日)
河岸で労働者たちが声をかけながら土囊を積んでいた。給料は1日500タカ(約680円)。労働者の一人は「この仕事は大変だけど、ここに住む人が安全に暮らせるようになることがうれしい」と話した(バングラデシュ・クルナ県 9月10日)
夕焼けに染まるマングローブ林。時折、漁師の小舟が通り過ぎる(バングラデシュ・クルナ県9月10日)
〈奨励賞〉スポーツ部門(国内)
飛んで白星 宇良がえし
産経新聞社 酒井 真大 
大相撲九月場所6日目、「おしだし」で大栄翔を下した宇良(左)。宙を舞っても白星をつかみ取る「強さ」を見せた(両国国技館)
〈奨励賞〉スポーツ部門(海外)
世界一の雄たけび 大谷が最後を締めた
報知新聞社 泉 貫太 
最終回に登板した大谷翔平。最後の打者を空振り三振に取った瞬間、雄たけびをあげて帽子を思い切り放り投げる(米国・マイアミ)
〈奨励賞〉文化芸能部門
八冠でも実力不足
日本経済新聞社 小園 雅之 澤井 慎也 目良 友樹 
「名人よりも強くなる」。2012年9月に小学校4年生で奨励会に入会した藤井聡太さん。盤面は当時お気に入りの棋譜(愛知県瀬戸市 2012年12月26日)
「まだまだ実力が足りない」。将棋王座戦を制し八冠達成から一夜明け、第4局終局時の盤面と記念撮影に応じる藤井聡太八冠(京都市東山区 10月12日)
〈特別賞〉(2023年度新聞協会賞受賞作)
『伝えていかねば』 沖縄・渡嘉敷島 集団自決の生存者
毎日新聞社 喜屋武 真之介 
父親に棒で殴られた傷痕が今も生々しく残る小嶺達雄さん。「おやじに恨みはないよ。そういう時代だったから」(沖縄県名護市)