©2019 TOKYO PRESS PHOTOGRAPHERS ASSOCIATION
東京写真記者協会賞-2021年グランプリ
触れてさよなら言いたくて コロナ禍での弔い
朝日新聞社 長島 一浩 角野 貴之 
 死別した「おじい」の新型コロナウイルス感染が死後に判明した家族を取材した。当初は遺骨になるまで一切会えないと言われた。遺体に特別な衛生措置を施し、家族自らも感染対策をとることでようやく実現させた対面だった。
「おじい」のひつぎを囲み、「ありがとう」と思い思いに語りかける遺族 (神奈川県内 3月12日)
火葬場へ運ばれる直前、ひつぎは再び密閉された。遺族みんなで花束を置いた (神奈川県内 3月12日)
ひつぎに横たわる「おじい」の手に、遺族が手袋越しに触れた。「寝ているみたい」(神奈川県内 3月12日)
草柳和典さん(手前)は父正雄さんの遺骨を納めた袋を受け取ると、静かに中を見つめていた (東京都内 3月12日)
一般ニュース部門賞(国内)
大規模土石流からの生還
読売新聞東京本社 関口 寛人 
断続的に雨が振る中、泥に覆われた建物の窓から、小さな男の子が助け出された。大規模な土石流は人々の営みを飲み込んだ。死者は26人、いまだ1人の行方が分かっていない。抱えられ、はしごを下りた男の子は、不思議そうに周囲をぐるりと見回した。その視線の先には一面、色彩なき世界が広がっていた (静岡県熱海市 7月3日)
一般ニュース部門賞(海外)
トランプ氏支持者 議事堂を一時占拠
朝日新聞社 ランハム 裕子 
米首都ワシントンの連邦議会議事堂前に集まったトランプ 大統領の支持者たち (米国・ワシントン 1月6日)
企画部門賞(国内)
「あの日からここまで」東日本大震災10年
産経新聞社 大西 史朗 鈴木 健児 松本 健吾 矢島 康弘 桐山 弘太 
 被災した人の数だけ「東日本大震災」がある。その一端を伝えるため、発生直後に撮影した人々を繰り返し訪問し、成長や変化を追ってきた。10年後のいま、出会った場所や生活の場を移した土地で、あの日の写真を手にしてもらい、それぞれが刻んだ時を写し込んだ。
「竹内裕太 朗さん(34)」
消防団員として住民に高台避難を叫び続けていた最中に津波に巻き込まれた。意識を失った状態で丘に打ち上げられ 自身は助かったが自宅が流失。それでも翌日から捜索活動を 続けた。「あの震災を風化させたくない。また災害がおきても 全力で人々を助ける」。あの日捜索活動をしていた大船渡 駅前で強く語った (岩手県大船渡市 2月13日)
「石田二巴さん(16)」
発生直後、南三陸の避難所で出会った石田二巴(つぐみ)さん。笑顔で炊き出しのうどんを食べる姿が印象的だった。 現在は地元の高校に通いバレーボールに打ち込んでいる。 震災については「じいちゃんにおんぶされて高台に逃げた事や 、避難所の体育館が暗くて泣いていた記憶が残っています」と話した。写真は津波被害で更地になったままの自宅前で撮影 (宮城県南三陸町 2月28日)
「後藤ちよさん(10)」(写真上)
生後5ヶ月で被災。今は家族に弟が増え、お姉さんになった。 「南三陸の海が大好き。将来は漫画家とイラストレーターに なりたい」  (宮城県南三陸町 2月20日)

「宮原伶奈さん(19)」(写真下)
津波で自宅が流され、約半年間避難所で生活した。 現在、管理栄養士を目指し東京の大学に在学中。「卒業後は大好きな大船渡に戻って故郷の役に立ちたい」  (岩手県大船渡市 2月14日)
「中村勇二さん(59)」
津波で経営する生花店が流失。「犠牲者に手向ける花を売ってほしい」という友人や親類の切実な願いがきっかけで、1カ月後、4月11日にテントを張って花屋を再開した。「すべてスムーズに来たわけではないし、10年間は長く感じる。山田はよい街になってきましたよ」 (岩手県山田町 2月18日)

「岸野康太郎さん(26)」
宮城県農業高校ボクシング部時代に津波でリングを失ったが、仮設ビニールハウスで練習して高校総体に出場。宮城県内の総合商社に就職し、現在は転勤で横浜勤務、忙しい日々を送っている (横浜市中区 3月1日)
「佐藤朱莉(あかり)さん(18)と石川実紅(みく)さん(18)」(写真左上)

2人はこの日、高校の卒業式を迎えた。佐藤さん(左)は地元のホテルに就職、石川さんは仙台の専門学校に進学する。避難していたリアスホールを訪れ、あのときを懐かしんだ (岩手県大船渡市 3月1日)

「洞口槙さん(36)、來輝さん(10)」(写真左下)

母・槙(まき)さんは震災2日後、3月13日に來輝(らいき)さんを出産した。地震による停電と混乱で分娩室が使えず、診察室の簡易ベッドで出産。現在は「サッカーに夢中」と話す (岩手県釜石市 2月21日)

「三條幸恵さん(24)」(写真右上)

仙台市宮城野区で中学時代に被災。夢だったスポーツジムのインストラクターとして都内で働いている (東京都渋谷区 2月24日)

「佐藤優菜さん(19)、綾花さん(17)、榛香さん(15)」(写真右下)

原発事故から約1ヶ月で避難していた栃木県から福島県飯舘村に戻った佐藤3姉妹(左から三女・榛香さん、長女・優菜さん、次女・綾花さん)。当時は外で遊ぶことができず、窓を閉め切った室内で絵を描くなどして過ごしていた。現在は「受験」、「保育の仕事に就く」、「美容師になる」、などそれぞれの目標に向かっている (福島市 2月27日)
企画部門賞(海外)
アジアの1枚 ~レンズを通して見た人々の営み~
共同通信社 八田 尚彦 泊 宗之 池上 まどか ソン・ホウ 
 アジア各国の人々が営む日常生活の中から、さまざまな表情を 切り取ったフォトエッセイ。週1回の連載企画でユニークな1枚を紹介している。
「〝秘密基地〟は万国共通」
ラオス中部の農村で、盛り上がった土に開いた穴から〝戦隊ヒーロー〟のように姿を現した子どもたち。遊び場にしているのは、木材を炭焼きするための窯。隠れ家にぴったりです。〝秘密基地〟ではしゃぎ回る子どもの姿は万国共通ですね (2020年2月17日)
「稲わらを集めて冬支度」
極寒の季節を前に、冬支度が進む中朝国境地帯に位置する北朝鮮・黄金坪島。オンドル(床下暖房)の燃料にもなる稲わらを住民が集めていました。新型コロナウイルス対策で国境を封鎖している北朝鮮。中国側から金網越しに、人々の暮らしぶりが垣間見えました (2020年11月13日)
「〝巨大恐竜の化石〟発見」
中国新疆ウイグル自治区の区都ウルムチで、乗っていたバスの車窓に突然、巨大な〝恐竜の化石〟が飛び込んできました。その大きさに思わず2度見。実はこれ、温泉ホテルがお客さんの目を引こうと、敷地内の斜面に造ったもの。年月がたって風化が始まり、だんだん本物っぽくなってきました (5月13日)
「毛沢東とはミスマッチ!?」
中国四川省の田舎にある、歴史的な建物の壁に描かれた毛沢東主席の肖像画。昇る太陽のような自信に満ちた表情に圧倒されます。見入っていると突然、おじさんが肖像画の前に現れて、お菓子をポリポリ。その場の雰囲気と緊張感のない振る舞いに、思わず吹き出してしまいました (5月30日)
「おつまみにいい〝かも〟」
中国浙江省紹興市郊外の店にずらりとつるされたカモ。 しょうゆに漬け込んだ香ばしい香りが食欲をそそります。値段は1羽30人民元(約500円)ほど。名産の紹興酒のいいおつまみになりそうだな、と思わず生唾をごくり。店員の盛んな客引きに、危うく〝かも〟にされそうでした (2020年10月5日)
スポーツ部門賞(国内)
ボールはどこへ?
スポーツニッポン新聞社 西川 祐介 
女子ゴルフ大東建託いい部屋ネット・レディースの初日、18番から放った横峯さくらの第1打は、カラスがくわえて行こうとし、慌てて本人が追いかける (札幌市滝のカントリークラブ 7月22日)
スポーツ部門賞(海外)
大谷、有終の笑顔
読売新聞東京本社 冨田 大介 
2021年、「二刀流」で大活躍した米メジャーリーグ・エンゼルスの大谷翔平。ベーブ・ルースの「年間2桁本塁打、2桁勝利」の大記録や本塁打王には、あと一歩届かなかった。レギュラーシーズンの最終戦、2021年シーズン46号となる先頭打者本塁打を放ち、笑顔がはじけた (米国・シアトル 10月3日)
文化芸能部門賞
こっ、こいつ動くぞ
読売新聞東京本社 鈴木 毅彦 
横浜港・山下ふ頭に実物大の「機動戦士ガンダム」が登場。高度なロボット技術を結集させて完成した高さ18メートル、重さ25トンの白いモビルスーツが、みなとみらい地区の夜景をバックに「ギュイン、ギュイン」と音をたて、迫力満点の「歴史的な一歩」を踏み出した (横浜市中区 2020年11月30日)
〈奨励賞〉一般ニュース部門(国内)
いのちの最前線
東京新聞 由木 直子 
新型コロナの症状が悪化し、ICUのある千葉大病院に搬送された重症患者。この日は東京都で新たな感染者が初めて5000人を超え、全国でも初めて15000人を超えた (千葉市中央区 8月5日)
〈奨励賞〉一般ニュース部門(海外)
WHO調査団、武漢の市場を視察
共同通信社 八田 尚彦 
世界で初めて新型コロナウイルスの集団感染が確認された中国湖北省武漢の「華南海鮮卸売市場」に入る、世界保健機関(WHO)の国際調査団を乗せた車列 (1月31日)
〈奨励賞〉企画部門(国内)
路上の命 守りたい
毎日新聞社 小出 洋平 
 コロナ下の路上生活者を支援する団体の活動に密着した。
雑居ビル入り口でぐったりしていた男性に聴診器を当てる「蒲田・大森野宿者夜回りの会」の越智祥太医師
越智医師(中央左)に付き添われ、男性は救急搬送された(東京都大田区 9月14日)
生活困窮者向けの医療相談会で、体調が悪いと訪れた相談者にフェースシールドを着けて対応する国際NGO「世界の医療団」の医療ボランティアとスタッフ(東京都豊島区 9月11日)
鉄脚のそばで雨をしのいでいた男性(右端)に食料などの物資を手渡す同会のボランティアら(東京都大田区 9月14日)
不在だった路上生活者の荷物の上に持参したお弁当などを置くNPO法人「山友会」のスタッフ(東京都台東区 10月6日)
〈奨励賞〉企画部門(海外)
~中国礼賛~習近平氏が導く大国の今
読売新聞東京本社 片岡 航希 
 創設百年を迎えた中国共産党の習近平総書記。党へ忠誠を求め、建国の父・毛沢東に匹敵する権威付けを急ぐ。 (全て北京で撮影)
北京五輪のメイン会場だった国家体育場「鳥の巣」で公演された共産党創設100年を祝う歴史劇「偉大な道程」で披露された、一斉に共産党旗を崇めるパフォーマンス (6月28日)
中国共産党創設100年の記念式典で、毛沢東の肖像画が掲げられる天安門の楼上から手を振る習近平総書記(前列左から2人目)。同3人目は胡錦濤前総書記、左端は李克強首相 (7月1日)
北京五輪のメイン会場だった国家体育場「鳥の巣」で公演された、共産党創設100年を祝う歴史劇「偉大な道程」。スクリーンには習近平総書記の映像が映し出された (6月28日)
式典には選ばれた者のみの参加が許された。路地裏では警戒のための柵が置かれ、警備する警官を所在なげに見つめる人たちの姿が見られた (7月1日)
〈奨励賞〉スポーツ部門(国内)
視線の先に
産経新聞社 納冨 康 桐山 弘太 川口 良介 
 5年越しの夢舞台。一瞬で勝敗が決まる厳しい世界で、選手たちが見せた力強い眼差し。歓喜や落胆、明暗が分かれた結末の数秒前、視線の先に選手たちは何を見ていたのか。その瞬間を切り取った。
「新体操・喜田純鈴」
指先にふわりと浮いたボールを見つめるまなざしに緊張感が漂う。手具を自在に扱い、音楽に合わせた華麗な演技を披露した (有明体操競技場 8月6日)
「卓球女子・伊藤美誠」
サーブに入る鋭い目線は、相手を射抜くようだと話題になるほど。女子単では日本勢初のメダリストとなった(東京体育館 7月29日)
「レスリング女子・川井梨紗子」
決勝戦でクラチキナ(ベラルーシ)を破り五輪2連覇を達成。試合後に「最後の1秒まで絶対に目をそらさないと決めていた」と打ち明けた (幕張メッセ 8月5日)
「体操男子・内村航平」
必死の形相で鉄棒をつかもうとするも、この直後にまさかの落下。内村の4度目の五輪が幕を閉じた(有明体操競技場 7月24日)
「バレーボール男子・石川祐希」
手を伸ばし、ボールにくらいつく石川。キャプテンとして日本代表を率い、29年ぶりの8強入りを果たした (有明アリーナ 8月3日)
〈奨励賞〉スポーツ部門(海外)
メジャーリーグにも‶神の手〟
日刊スポーツ新聞社 菅 敏 
MLBヤンキース戦で、エンゼルス大谷翔平がホームスチールを成功させた。5回裏エンゼルス2死一、三塁、相手捕手のタッチをかいくぐりながら、ホームベースに「神の手」を滑り込ませた (米国・エンゼルスタジアム 8月31日)
〈奨励賞〉文化芸能部門
ファンとハイチーズ!
東京中日スポーツ 佐藤 哲紀 
舞台あいさつを終え、メンバーのスマートフォンでファンと一緒に自撮りする嵐の4人 (東京都千代田区 11月3日)
〈特別賞〉(新聞協会賞受賞作品)
「ぬくもりは届く」~新型コロナ 防護服越しの再会~
毎日新聞社 貝塚 太一 
8カ月ぶりの母・中島万里子さん(左)との面会で、防護服「メディコン」を着て抱き合う箕浦尚美さん (札幌市北区・介護付き有料老人ホーム「フルールハピネスしのろ」 2020年10月29日)
〈特別賞〉
眞子さまご結婚 佳子さまと別れの抱擁
産経新聞社 佐藤 徳昭 
秋篠宮ご夫妻に別れを惜しむように何度もお辞儀し、最後の言葉を交わされた眞子さま。屈託のない笑顔で大きく両手を広げた妹・佳子さまと抱擁し、瞳を見つめ合われた (赤坂御用地 10月26日)
▲ ページTOP